バレット食道とは
バレット食道は、逆流性食道炎の結果起こります。通常食道粘膜は扁平上皮で構成されていますが、度重なる胃液の逆流によって炎症が繰り返された結果、食道の扁平上皮が胃壁の細胞である円柱上皮に置き換わってしまった状態を言います。
バレット食道では、どの程度食道の粘膜が胃壁の粘膜形態に置き換わってしまったかが重症度や食道がんリスクの判定基準となります。
置き換わった食道粘膜が噴門から3cm未満の場合SSBE(Short Segment Barrett’s Esophagus)と分類され、がん化のリスクはあまり高くないとされます。それに対し、置き換わった粘膜が噴門から3cm以上の場合はLSBE(Long Segment Barrett’s Esophagus)と分類され、食道がん化のリスクが高い状態とされています。LSBEの場合、1年で1.2%ががん化するという報告があります。
現在食道がんは増加傾向にあるため、その一因としてのバレット食道には注意する必要があります。
バレット食道の原因
バレット食道の原因は、胃液の食道への逆流によるものです。食道の粘膜には胃液に対する刺激に弱く、そのため胃液に晒され続けることで食道粘膜は耐えず炎症を起こし逆流性食道炎となります。この食道粘膜の炎症が治まったり、再発したりを繰り返すうち食道の粘膜組織である扁平上皮が胃の粘膜組織である円柱上皮に置き換わってしまうことでバレット食道になります。
近年食生活の変化などによって、逆流性食道炎が増加傾向にありますが、治療をしないで放置するとバレット食道となり食道がんのリスクが高まりますので注意が必要です。
- 胸やけ
- 吐き気
- げっぷ・呑酸(すっぱいものが上がってくる)
- 飲み込みにくさ
- のどの違和感
- 風邪でもないのに咳が続く
- 腹部膨満感
バレット食道は、逆流性食道炎から起こる疾患です。そのため、症状は逆流性食道炎と共通のものになります。なお逆流があっても人によってあまり自覚症状があらわれないこともあります。
バレット食道の検査・診断
バレット食道は、逆流性食道炎によって起こります。そのため、まずは問診で症状や既往症、生活習慣などについて詳しくお聞きし、逆流性食道炎が疑われる場合、胃カメラ検査で食道や胃の入り口などの状態を確認していくことになります。また疑わしい組織がある場合、サンプルを採取して病理検査を行うこともあります。バレット食道が確認されたら、経過観察のため、定期的に胃カメラ検査を受けるようにしてください。
バレット食道の治療
残念ながら円柱上皮化した食道粘膜をもとの扁平上皮に戻す治療法はいまのところありません。できるだけバレット食道となった部分を拡げないよう、逆流性食道炎の治療を行うとともに、食べ過ぎ、飲み過ぎを避け、脂っこいものも控える、禁煙する、飲酒を控える、刺激物を控えるなどの食生活の改善、肥満の解消や腹圧のかかる前屈みの姿勢などを避けるといった生活改善が大切です。
バレット食道のよくあるご質問
バレット食道と言われた場合、食事で気を付けることはありますか?
胃酸が食道に逆流して食道粘膜が炎症を起こすことでバレット食道になります。そのため、暴飲暴食を控える、脂っこいものを減らす、刺激物を摂り過ぎないなど、食事内容の改善と、早食いなどを控え、食べてすぐ就寝しないなど食事習慣の改善も大切です。
バレット食道と言われましたが食道がんになりやすいのでしょうか?
日本人のバレット食道の多くは円柱上皮化した組織が噴門から3cm以内のSSBEという状態が多く、この場合食道がん化のリスクは低いと考えられます。噴門から3cm以上円柱上皮化した状態をLSBEと言いますが、この状態でのがん化の可能性は年率1.2%程度と報告されており、食道がん化のリスクはやや高いと言えるでしょう。
SSBEと言われましたが、治療は必要でしょうか?
基本的に円柱上皮化した部分を元にもどす治療法がありません。ただし逆流性食道炎を放置することによって、円柱上皮化がさらに進行することもありますので、逆流性食道炎の治療とともに、食生活を含む生活習慣の改善が大切です。