40歳代から増加する大腸がん
日本人では、食生活の欧米化などの関係から、大腸がんは近年増加傾向にあり、2019年の統計では男女計で罹患数の第1位を占めており、いまだ増加傾向にあります。年代別に見ると、40歳代からわずかに増え始め50歳代に入ると急激にその数を増やし、年齢が上がるごとに90歳代まで増加傾向にあります。さらに死亡者数では2021年の統計で男女計では2位、女性のみの場合は第1位となっています。
ただし年次推移では、罹患数こそ増加傾向にあるものの、死亡者数はやや減少傾向にあり、便潜血陽性からの精密検査や大腸カメラ検査の普及が、早期発見のために効果を上げてきていることが推測できます。大腸がんは早期発見さえすれば、内視鏡のみの侵襲の少ない手術で完治できるがんです。すこしでも気になる症状があれば、はやめに消化器内科にご相談下さい。
大腸がんの原因
大腸がんは、早期の自覚症状がほとんどありません。病気が進行してくるに従い、下記症状が現れるようになります。
大腸がんの発症リスクが高まる要因
大腸がん発症のリスク要因としては、加齢、食生活・食習慣、遺伝、体格的要素などが挙げられます。年齢的要素
加齢によって、大腸がんリスクが高まることは、年齢別罹患数の統計をみても明らかです。大腸がんは40歳代でわずかに増え始めます、同時に40歳代になると前がん病変である大腸ポリープの発症が増えてきます。この要因を受けて50歳代になると急増し、以後90歳代まで増加し続けます。そのため40歳代を迎えたら、食生活など生活習慣の改善を心がけ、定期的に大腸の検査を受診するようにしましょう。
食生活
高たんぱく食(獣肉の赤身部分)、脂っこい高脂質食などの摂取量が増え、相対的に食物繊維の摂取量が減少してきたことも罹患数が増えていることに関連していることが考えられます。
嗜好品
酒類の飲み過ぎ(アルコール摂取量≧23g/日)、激辛の香辛料を摂り過ぎる、喫煙習慣なども大腸がんの発症リスクを高めると考えられています。
遺伝
血縁の家族の方に、大腸がんや大腸ポリープの既往症がある場合、大腸がんの発症リスクが高くなります。
体格的特徴
肥満、高体脂肪、高身長(男性170cm以上、女性157cm以上)の方は大腸がんの発症リスクが高いとされています。
大腸がんの有無を調べる大腸カメラ検査
大腸がんは比較的ゆっくりと進行するため、早期のうちに発見できれば、侵襲の少ない内視鏡のみの治療で完治させることができる可能性が高いがんです。しかし、気づかずに放置してしまい、進行させて症状があらわれてから治療を始めると、開腹手術が必要になり、また手術不能となることもあり、日常生活の質が大きく低下しますし、また死亡率も高くなってしまいます。
そのため、大腸がんは早期発見、早期治療が大切です。大腸がんの検査には、便潜血検査、注腸X線検査などの方法もありますが、いずれも早期癌の発見率は高くなく、また確定診断には至りません。その点、大腸カメラ検査であれば、大腸粘膜の状態をハイビジョン画面でつぶさに観察して、異常が見つかれば組織のサンプルを採取し病理検査で確定診断が行える他、前がん病変の大腸ポリープや早期がんの可能性の高いポリープなどをその場で切除することも可能です。大腸ポリープを切除することで将来のがん化の予防にもなり、検査、診断、処置、予防までが可能な検査と言うことができます。
大腸がんに移行する大腸ポリープ
大腸ポリープにも様々な種類があります。そのうち腫瘍性のポリープはがんに移行する可能性が高くなりますので、一定以上の大きさ(5mmを超えるもの)が見つかった場合、極力早めに切除しておくことで、将来のがん化を予防することが可能になります。
当院では、検査中にポリープや早期がんが見つかった場合、その場で切除する日帰り手術を行っています。
健康診断などで便潜血陽性となった方や、胃腸の調子がどうも悪いという方、40歳を過ぎて一度も大腸カメラ検査を受けたことがないという方は、是非ご相談ください。
大腸がんの治療
大腸がんは早期であれば、内視鏡による切除が可能で、切除しさえすれば完治が望めます。そのため患者様の身体への負担も少なくてすむことになります。
しかし、進行させてしまうと、開腹手術が必要になり、また重症度によっては、人工肛門などになり、お身体への負担も強くなりますし、日常生活の質も大きく低下してしまいます。
さらに転移がある場合は、化学療法や放射線療法などが必要になってしまします。
できるだけ早く大腸がんを発見するため、定期的な検査をしっかりと受けるようにしましょう。