食道がんの統計
食道がんと新たに診断される人は、圧倒的に男性に多いのが特徴です。近年食道がんと大きく関わりがあると考えられていた喫煙率が全体的に低下しているのにも関わらず、食道がんの罹患者数は増加傾向にあります。
年齢別では50歳代から増加しはじめて、70歳代でピークを迎えます。近年では従来の扁平上皮癌だけではなく、胃と食道の接合部やバレット食道を発生母地とした腺癌も緩徐ながら増加傾向にあり、女性や飲酒習慣のない方、喫煙歴のない方でも注意が必要です。
食道がんの症状
食道がんは早期のうちはほとんど自覚症状があらわれません。進行してくると、飲み込みにくい、食べ物や飲み物がつかえる、嗄声(声がかすれる)、咳、胸や背中の痛み、体重減少といった症状があらわれます。また出血による黒色便(タール便)や貧血などの症状があらわれることもあります。
食道は、周辺に肺や心臓など胸郭の重要な組織や胃などがあり、浸潤や転移を起こしやすいがんです。そのため早期のうちに発見することが重要で、そのため胃カメラによる定期的な検査が重要です。
食道がんのリスク要因
食道がんの発症のリスクを高める要素は、熱い食べ物や刺激物、逆流性食道炎などいろいろありますが、日本では、圧倒的に飲酒と喫煙が大きく関係しています。
アルコールは時間が経つと分解されてアセトアルデヒドになり、さらに代謝されて酢酸になって汗や尿として排泄されます。
日本人の統計では、このうち、アルコールからアセトアルデヒド、アセトアルデヒドから酢酸へとそれぞれ代謝していく仕組みを持つお酒に強く飲んでも顔が赤くならない人が5割、この代謝の仕組みをまったく持たずお酒をまったく飲めない人が1割、この代謝の仕組みに関わる酵素が少なく、お酒に弱く飲むと顔が赤くなる人が4割といわれています。
この4割の人は、アセトアルデヒドから酢酸へと代謝する酵素が少ないため、アルコールを飲んで作られたアセトアルデヒドが長く体内に滞留し顔が赤くなったり、翌日までお酒の匂いがしたりといった症状があらわれます。アセトアルデヒドは、人体に様々な害がありますが、特に食道に刺激を与え、食道がんの発症リスクを高めてしまいます。お酒を飲んで顔が赤くなる人、昔は赤くなっていたが飲むにしたがってお酒に強くなってきたという人は要注意です。
また、喫煙者は非喫煙者と比べて7倍も食道がんの発症率が高くなるという統計があります。これに飲酒が加わると、さらに5倍増加すると言われていますので、喫煙・飲酒をともにする場合、どちらもしない人と比べると35倍も食道がんの発症リスクが高まることになります。
まずは禁煙、さらにお酒は飲み過ぎない習慣をつけることが大切です
食道がん組織ごとのリスク要因
扁平上皮がん | タバコ、アルコール、アルコールを摂取すると顔が赤くなりやすい、熱い飲み物、食道アカラシア |
腺がん | タバコ、肥満、欧米化した食生活、ピロリ菌陰性、逆流性食道炎、バレット食道 |
食道がんの検査
食道がんの発見方法としては、上部消化管造影検査(バリウムによる)と胃カメラ検査があります。しかし、早期発見が大切でありながら、早期の食道がんは粘膜が盛り上がらず、平坦な形やごく浅い陥凹を呈し、わずかな色の変化のみということが多く、造影検査では発見しにくいと考えられています。早期発見・早期治療のためには胃カメラ検査が最も有効です。
また胃カメラ検査であれば、疑わしい部分を見つけた場合、サンプルを採取して病理検査によって確定診断に導くことも可能です。
食道がんの発症リスクの高い方は、とくに定期的な胃カメラ検査をお勧めします。
当院では、内視鏡検査の専門医・指導医の資格を持つ医師陣が、最新の最上位内視鏡システムを駆使して、正確でスピーディな、患者様の苦痛を最低限に抑えた検査を行っていますので、安心してご相談ください。
食道がんの治療
食道がんは、早期のうちであれば、内視鏡による切除という侵襲の少ない手術で完治できます。そのため入院も1週間程度ですみます。しかし、進行すると、食道は重要な血管や臓器などに隣接しており、浸潤(近隣の組織にがんが拡がること)や転移(離れた臓器やリンパ節などにがんが飛び移ること)が多くなります。手術自体も難しくなる上、浸潤や転移がおこっていた場合は、放射線治療や化学治療も必要になります。そのため入院期間もかなり長くなってしまいます。
食道がんを含め、すべてのがんは、近年の医学の進歩によって治せる病気になってきています。しかし、そのためには早期発見・早期治療が大切です。食道がんの場合、飲酒や喫煙など発症リスクの高い生活習慣をお持ちの方は、定期的に胃カメラ検査を受けておくことを強くお勧めします。