食道癌になりやすい体質はありますか?

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食道癌になりやすい体質はありますか?
望月 暁

理事長・院長 望月 暁

所属学会・資格

  • 医学博士 (研究テーマ:消化器内視鏡治療)
  • 日本消化器内視鏡学会関東支部評議員
  • 日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本内科学会認定医
  • Digestive Endoscopy reviewer

HP
https://www.gutclinic-tokyo.jp/

食道癌は環境因子による発症が圧倒的に多いですが、お酒に弱いなど遺伝的・体質的な問題も深く関わっています。ご自身の体の特性を知っておくことは予防としても有効です。

お酒を飲むと顔が赤くなりやすい方は要注意!

体内のアルコール分解酵素が弱いと発癌性の高い有害物質が体内に溜まりやすくなります。
癌の発生に大きな影響を与えるものはタバコとアルコールです。中でもアルコールは遺伝的要素を含めた体質的な問題が深く関わっています。アルコールを摂取すると体内では有害な発癌性物質アセトアルデヒドが生成されます。これを体外に早く排出するためにはさらなる分解が必要となりますが、その分解酵素の力が強いほど毒素はすばやく処理されます。しかし、分解酵素の力が弱い場合には毒素が体内に長く滞留してしまうこととなり、それに伴い発癌リスクも上昇します。若い頃からお酒を飲むと顔が赤くなるといったような方は、まさに体内のアルコールを分解する酵素が弱いタイプにあたります。

“ほろ酔い”は実は危険な状態?!

“ほろ酔い”は実は危険な状態?!“お酒が弱い”という方も2パターンあります。ひとつはアルコールを全く飲めない方、もうひとつは飲んだら顔がすぐ赤くなる方(フラッシング反応)です。全く飲めない方に関してはお酒を飲むと吐き気や体調に異変を感じることが多いため、ご本人も積極的にアルコールを摂取することは自然と避けるようになります。その結果、必然的に食道癌のリスクも低下します。一方で、顔がすぐ赤くなるような方は一見、ほろ酔い加減がちょうど良いように思われがちですが、飲酒後の血中内のアセトアルデヒド濃度を測定すると正常な方に比べ6倍ほども高くなっています。そういった方がさらに毎日3合以上の飲酒を続けた場合には、通常の方より100倍ほども発癌リスクが跳ね上がります。

食道と胃のつなぎ目部分の筋肉が硬い方

食道は緩んだり閉じたりを繰り返して食べ物を通過させています。食道の筋肉の収縮が強く硬すぎると、通過の際の道幅を十分に開くことができず嚥下障害や炎症を引き起こしやすくなります。これは「食道アカラシア」という病態であり、食道癌に進行しやすいものです。バリウム検査で見つかりやすい病気のひとつですので、定期的な健康診断等の機会を利用して早期に気づくことが大切です。

年齢も大きなリスク因子のひとつです

年齢も大きなリスク因子のひとつです食道癌の発症年齢は一般的に50代から増加の一途をたどります。男女別でみると男性の患者数の方が圧倒的に多いというのも特徴的です。年齢を重ねるほどに定期的な検査を受ける機会を持つことはとても重要です。

食習慣も注意すべきポイントです

体質とは異なりますが、食道を損傷しやすいような食べ物を好まれる方も注意が必要です。例えば熱すぎる食べ物、辛すぎるもの、刺激が強いものは食道を傷つけやすい代表的なものです。損傷した箇所は癌の発生母地になりやすく、進行とともに痛みやつかえ感、圧迫感を感じるようになります。

食道癌の種類別の特徴

扁平上皮癌

日本では約9割以上の患者さんがこのタイプにあたります。タバコとアルコールが最大の発癌要因であり、特に両方をたしなむ方の発癌リスクは通常の30~50倍にも跳ね上がります。

腺癌

欧米人にとても多いタイプですが、日本では全体の約1割弱程度の患者数です。しかし近年の食事の欧米化に伴い、将来的な患者数の増加が懸念されています。胃酸逆流と因果関係が深く、逆流性食道炎が繰り返し起きることでバレット食道という病態になり、そこから腺癌を発症するリスクは非常に高率と言われています。胃酸逆流は内臓脂肪による腹圧の上昇から起こります。肥満はひとつの大きなリスク因子と言えます。

食道癌を早期に見つけ出すために―

一般的に食道癌は早期発見が難しい病気とされています。早期に異変に気づくためにはやはり内部を詳細に観察することができる内視鏡検査が第一選択と言えます。特に命に関わるような腫瘍性病変の場合には何よりも早い治療開始が鉄則です。健康診断の機会などを有効に利用しながら、早期に異変に気づける体制作りを意識していただければと思います。

タバコやアルコールは自分で摂取量の軽減ができるもの―

タバコやアルコールは自分で摂取量の軽減ができるもの―ストレスを感じない程度に生活習慣の改善を図ることが大切です
食道は他の臓器に比べるとその方の食習慣がダイレクトに影響してしまう部位です。胃酸逆流がある方は胃の内圧上昇を防ぐために食後2時間程度は横にならないようにしてみたり、腹八分や運動による肥満解消に努めることも有効です。発癌リスクの高いタバコやアルコールを日常的に好まれる方は意識的に軽減する努力が必要です。タバコやアルコールといった嗜好品は特に自分が意識すれば摂取を避けることが可能なものでもあります。身体的・精神的なストレスを感じない程度に、少しずつ生活習慣を見直してみることも予防おいてはとても重要なことです。

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