食道に痛みが出てきた。どうしたらいい?

食道に関するお悩み
望月 暁

理事長・院長 望月 暁

所属学会・資格

  • 医学博士 (研究テーマ:消化器内視鏡治療)
  • 日本消化器内視鏡学会関東支部評議員
  • 日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
  • 日本消化器病学会専門医
  • 日本内科学会認定医
  • Digestive Endoscopy reviewer

HP
https://www.gutclinic-tokyo.jp/

食事という日常生活に直接的に関わる重要な臓器のひとつ「食道」―
進行すると治療が困難になるだけでなく、私たちの食生活に深刻な影を落とします。

Q.「食道の痛み」とはどのようなものですか?

「食道の痛み」とはどのようなものですか?

A.痛みの感じ方や表現の仕方には個人差もありますが、

  • 食事の前後に痛みを感じたり食べ物がつかえる感じがする
    食道を食べ物が通過する際に感じる痛みや圧迫感
  • 食事に関係なく、持続的に感じる痛み
    なにもしていない状態でも痛みが続く状態
  • しみるような食道の違和感
    チクチクするような感覚やヒリヒリ感など

といった表現で痛みを訴えられる患者さんが多く見られます。
痛みの原因もさまざまです。それぞれの疾患において適切な治療を行うことが大切です。

Q.どのような病気が考えられますか?

A.食道や胸部周辺に痛みを感じる病気には、主として以下のようなものが考えられます。

  • 食道癌:食べ物が飲み込みにくい、食事の際にのどに痛みを感じる
  • 逆流性食道炎:胸やけや胃酸が上がるような感覚があるため痛みを感じやすい
  • 食道アカラシア:食道の蠕動運動が乱れた状態で、食道の攣縮を痛みと感じる
  • 狭心症や不整脈:胸の広範い範囲に渡る胸部の痛みや圧迫感と感じる
  • 心筋梗塞:突然の胸痛から始まることが多いため、食道の痛みと混同することもある
  • 肺梗塞:呼吸が苦しくなることで胸部に強く痛みを感じる

といった心臓や肺に起因する痛みの場合もあります。
その他、薬剤性の食道潰瘍(良性)も痛みを感じることがあります。食事に関連しない痛みの場合には食道以外の原因が考えられます。

Q.必要となる検査はどのようなものですか?

A.食道の痛みの原因は、通常の胸部レントゲンで確定することは困難です。また、食道や食道周りは同じような組織でできているため、リンパ節に大きな腫れや腫瘤があるといったような状態でなければ、基本的に異変は見つかりにくいものです。胃癌健診におけるバリウム検査では食道の様子も併せて観察するため、食道の狭まり具合などはわかる可能性もありますが、早期段階での発見は難しいというのが現実です。ある程度進行した状態の食道癌が見つかることが多く、やはり早期発見という観点では、胃カメラなどの内視鏡を用いた検査は必要不可欠と言えます。胃カメラは食道・胃・十二指腸といった部位を重点的に確認することができる精度の高い検査です。その他、食道まわりを診る検査としては胸部CT検査があります。必要に応じて心電図検査を行うこともあります。

Q.治療はどのように行われますか?

A.疾患ごとや進行度によっても治療法はさまざまに異なります。例えば、食道癌を例に挙げると、早期の段階であれば内視鏡を用いての切除が可能です。進行した場合には外科的切除、化学放射線療法、抗癌剤による治療といったパターンが考えられます。その他、逆流性食道炎は胃酸を抑える治療を重点的に行ったり、食道アカラシアは薬物療法と内視鏡による拡張処置や切開などを合わせて行うなど、それぞれの疾患や進行度に応じて適切な治療を施します。しかしながら、食道をはじめとした消化管粘膜の回復は比較的早いというのも特徴的なことです。早期に原因を取り除くことができれば数日で症状は改善され、数週間で治るといったケースは多いです。

Q.食道癌とはどのようなものですか?

A.食事の際に食道のつかえや痛みを感じる場合には、進行性の食道癌の可能性が疑われます。早期の食道癌は自覚症状がありません。つかえや鈍痛を感じる段階では、かなり進行した状態が考えられます。進行スピードとしては消化管癌の中で比較すると中程度ですが、大腸癌に比べると進行スピードは速いため注意が必要です。また、日常的にアルコールやタバコを吸われる方の発癌率は10~50倍にと跳ね上がります。リスクが高い食生活をされている方は定期的にしっかりとした検査を受けることが大切です。食道癌の手術は胸部を切り開くため、身体が受けるダメージは非常に大きなものです。そういった意味でも、内視鏡による治療ができる段階で異変を見つけ出すことはとても重要です。

Q.診察に行くべきタイミングとは?

A.持続する痛みによって食事が満足に取れない場合には、一刻も早い受診が必要です。一方で食事は問題ないが、日常生活に支障をきたすケースもあります。例えば食道の違和感によって仕事に集中できない場合や夜ぐっすり寝れないといったお悩みがある方は、一度ご相談されることをおすすめします。それより軽い症状の場合にも、痛みの頻度が多い場合には別の病気が隠れている可能性も考えられますので、受診の必要があると考えます。

Q.普段の食生活において気をつけることはありますか?

A.進行性の癌などで食道が狭くなった場合には、通過しやすい食事を摂る必要があります。さらに悪化すると流動食になりますが、早期の場合には特に食事制限は必要ありません。逆流性食道炎も食事制限は特に必要ないですが、腹八分を心がけながらご自身の食生活を今一度見直すという意味では大変有効だと思います。特にお酒を飲むと顔が赤くなりやすい方などは食道癌の発生リスクが高いと言われています。熱過ぎるものや刺激の強いものは、食道の痛みの原因にもなりますので避けた方が良いでしょう。

生活の質(QOL)に直接的に関わる病だからこそ
異変や違和感を感じたら、お早めにご相談ください。

食道の痛みはそれぞれの疾患と程度によっても異なりますが、早期発見・早期治療はやはり何よりも重要な鍵を握ります。食道癌でも、早期の場合は1週間程度の入院で治療できます。しかしながら、進行癌や手術できないような段階にまで悪化した場合には、進行を抑えるための抗癌剤治療や食事制限なども併せて必要となり、治療は長期に渡ります。嚥下障害が出る段階になるとみるみる体重が落ちるなど、生活の質(QOL)の低下にもダイレクトにつながり、精神的な負担も重くなります。食道は体全体においてとても重要な臓器のひとつです。長く続く異変や違和感を感じたら、我慢せずお早めにご相談いただければと思います。

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