理事長・院長 望月 暁
所属学会・資格
- 医学博士 (研究テーマ:消化器内視鏡治療)
- 日本消化器内視鏡学会関東支部評議員
- 日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本内科学会認定医
- Digestive Endoscopy reviewer
大腸癌においてその発症の多くは散発性です。しかし、遺伝的・体質的な問題により高い発症リスクを抱えられている方も実は一定数いらっしゃいます。特に大腸癌は他の癌に比べると遺伝性が強いことがわかっているため警戒が必要です。
大腸癌の主な発症パターン
遺伝性因子による大腸癌
全大腸癌の約5%程度にあたる方が遺伝性であると言われています。中でも家族性大腸腺腫症やリンチ症候群という病気は放置すると大腸癌を発症するリスクが非常に高率となるため、定期的な観察や検査を加えることがとても重要です。
家族性大腸腺腫症
大腸内に100個以上のポリープを有する病気です。放置し続けると100%の確率で大腸癌に進行します。また100個未満の場合でも家族性大腸腺腫症の家族歴がある場合には同じです。若年発症するケースも多く、30歳頃で5人に1人の方が大腸癌を発症することがわかっています。家族性大腸腺腫症の方がポリープを放置することは大変危険です。早期に内視鏡による切除など適切な治療を受ける必要があります。
リンチ症候群
遺伝子が変異したことにより発癌を抑えるべき機能が低下してしまう病気です。親・子・兄弟の関係において少なくとも3人以上の大腸癌を患われている方がいるご家系、2世代にわたって大腸癌を発症されているご家族、50歳未満の若年性発癌をされた方が家族内にいらっしゃる方などはリンチ症候群の可能性が考えられます。精緻な遺伝子検査を受けることが推奨されています。リンチ症候群は大腸癌以外にも子宮体癌、腎盂癌、尿管癌、小腸癌などもあわせて発症するリスクが高まりますので特に警戒が必要です。
家族性大腸癌
遺伝性大腸癌ほど高いリスクはないものの、食習慣を含めての生活習慣や環境因子が癌発症に深い影響を与えている可能性が指摘されています。「家族性」という名の通り、ご家族で同じ食事を摂ったり生活習慣を共にされることで、発癌因子も共有している可能性があります。日常的な加工肉の過剰摂取、野菜不足や慢性的な運動不足などはご家庭内で等しく影響しあう傾向があります。そのためご家族が大腸癌と診断された場合には、ご自身の身体も同じように心配されることはひとつ大切な観点であると言えます。割合としては全大腸癌のうち20~30%程度を占めると言われています。
散発性大腸癌
全大腸癌のうち約70%が散発性大腸癌です。生活習慣、環境因子、加齢などが大きな発症要因として考えられています。特にタバコや肥満との関連性は顕著であるため、禁煙や軽い運動習慣を心がけるように生活習慣の改善を図ることで大幅なリスク軽減も期待されます。その他、過度の飲酒や食物繊維不足、加工肉の過剰摂取なども発症要因のひとつとして挙げられます。
Q.遺伝性の癌を早期発見するために必要となる検査とは?
A.他の癌と比べて遺伝による発症率が高い大腸癌の早期発見には、内視鏡を用いての定期的な観察が有効です。特に遺伝性の大腸癌は十二指腸や胃への合併も大いに考えられるため、胃カメラを用いた詳細な検査もあわせて検討することが重要です。
究極的な予防法は定期検診を受けること―
大腸癌は日本人の死因上位にある非常に怖い病気である反面、早期発見できれば根治の可能性が大いに見込める癌でもあります。
若年性発症であっても、大腸癌は早期発見できれば通常の治療法と何ら異なる点はありません。早期であるほど内視鏡によって簡単に切除することができます。進行癌であっても早期に外科的治療を施すことができれば根治は大いに望めるものです。そのために重要となるのは定期的な検査機会を設けることです。特に家族性大腸腺腫症が疑われる方は積極的なポリープ切除は必須となります。家族性大腸腺腫症はポリープがあるだけでは自覚症状が現れないため、内視鏡検査を行った際にたまたま発見されて診断がつくというケースも決して珍しくありません。早期にご自身の身体の異変に気づき、正しく対処することが何より肝心です。また、大腸癌の発症は加齢も大きな要因のひとつとなります。40歳を過ぎた方は大腸癌検診を積極的に受けられることおすすめします。検診機会を有効に活用しながら早期に異変に気づける体制作りをご自身でも意識していただければと思います。
大腸癌は日本人の死因上位に君臨するほどの大病です。しかしその一方で、早期発見できれば患者さんの負担も比較的少なく十分根治が期待できる病でもあることもまた真実です。ぜひ定期的な検査をこれからも意識していただければと思います。
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